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【独自取材】「宇宙スキル標準の現時点」Vol.2

 前号からの集中特集『宇宙スキル標準』全国説明会(8月4日、内閣府がオンラインにて開催)の模様(事務局による説明)を、引き続き、読み物的に再現していく。宇宙スキル標準は、内閣府のホームページ内で検索すれば閲覧できる。EXCELファイルで細かくスキル・業務データベースの一覧化を図った「試作版」は、さらに誰しもに「読んでもらいたい時に、使いやすい、わかりやすい」成果物を目指し、ブラッシュアップしていくのが今年度の取り組みだ。今回は、宇宙スキル標準(試作版)の具体的な内容から、全体の構成《左表Ⓐ参照》にふれていく。まず①【スキル一覧】に関しては、宇宙業界に共通的に求められるスキルを一覧化したEXCELファイルが掲載され、それを見れば「あっ、こういったスキルがあるのか」と理解できる、そんな一覧表になっている。

▲Ⓐ宇宙スキル標準の全体像(出典:内閣府宇宙開発戦略推進事務局)

「宇宙スキル標準」の内容と位置付け
 宇宙スキル標準とは「ロール・業務・スキルの関係性の整理」

 続いて②【業務一覧】は、まだ足掛かり的ではあるが「共通的にこういう業務が、一般的に宇宙業界には存在するぞ」というもの。スキル一覧、業務一覧に関しては、特に、他業界の従事者が見て「スキル・業務には、宇宙固有の名称もありますが、わかりやすく汎用的な表現でとの方針」で作成している。
 ③【スキルディクショナリ】とは「この業務を遂行する上でどういったスキルが必要になるかを可視化した」スキルと業務の対応表である。
 ④【スキルレベル一覧】は、各スキルに対して4つの評価軸、5つのレベルで「スキルごとの評価をしていく上での指針として使える」ようなレベル設定
をした表になっている。
 ⑤【スキル×学問・資格検定】⑥【ロール一覧】⑦【参考プログラム】、これらは参考情報として、それぞれのスキルを獲得するにあたっては、どういった学問、資格が関連してくるのか。具体的にこの業界はどういった職種・ロール(役目)が存在するのか。参考となるような企業・団体・教育機関・自治体などが取り組んでいる、人材育成に関するプログラムの情報を記載している。
 なお、これら資料の引用等での使用は自由であり(※宇宙スキル標準の参照を明記)、多くの利用者の活用がのぞまれる。

宇宙スキル標準作成の前提

 宇宙スキル標準の作成は先述のとおり、他業界の従事者や学生から見た時に「あっ、こういった形で『チャレンジ』できるんだ」との気付きになればとの思いがある。
 逆にいえば「こういったスキルがないと、宇宙業界では活躍できないんだな・・・・というネガティブな捉え方ではなく、必須な事項ではないと理解いただき、あくまでこういったスキルがあり『チャレンジできるんだ』という指針・参考にしてほしい」位置づけとなる。
 そして「利用者がカスタマイズをする」ことを前提としている。例えば企業であれば、必要な業務・スキルはそれぞれ異なり、必要なスキルの粒度感も、企業・人材エージェントごとに変わってくるかもしれない。その意味では、共通項となるようなレベル感、粒度、内容で作成している状況である。
 「これを元に、皆さまそれぞれでカスタマイズして活用いただくことを前提としているので、やはり定期的な改定等が必要だと思っています。あくまで現時点で標準とされるスキルを整理しているものだと、ご了承ください」

宇宙スキル標準の整理体系

 宇宙スキル標準の中では「ロール」「業務」「スキル」と項目を整理している。特に組織においては、スタートアップ、大手企業によって、職種・ロールは変わってくるので、その業界で一般的、に主要だと考えられているロールを例示し「組織における、任意の業務を担当する職種名を指しています。例えばプロジェクトマネージャーや、〇〇系エンジニアなどです」
 そして業務では、組織で特定の目的を達成するために必要となる機能や仕事を指しており「プロジェクトマネジメントや〇〇系の設計業務などが該当します」
 また、スキルは業務を遂行する上で必要となる能力、業務の遂行能力と定義をするので、スキルの中には知識や技能も含まれてくる。これら、ロール・業務・スキルの「関係性の整理」が、宇宙スキル標準の位置づけとなっている。

スキル項目の整理方針

 さらに、整理しているスキルの対象範囲の概念について、三角形の構造イメージ図で考えれば「上に行けば行くほどスキルの特殊性・専門性が上がっていきます。例えばスキルに関して、個社固有、あるいは特定の状況下にのみ必要とされるスキルは対象外にしています」
 あくまで業界の共通項レベルで整理をしている思想だが、一方で「広すぎても採用していないという状況」でもある。すべての業界に共通的なスキル、例えば論理的思考能力、ロジカルシンキング、コミュニケーション能力等々は、宇宙スキル標準でまとめる以外にも、すでに体系的にまとめられているものがあるため、宇宙スキル標準の中では整理しないとしている。
 「あくまでこの『中間』です。宇宙業界の主要業務に関連するような標準的なスキルを整理して、汎用的に参照できるものになっています」
 活用する組織によって、役職や一人ひとりの人材が担う業務範囲は異なる状況をふまえ、どのような組織でも活用できるように、スキル項目やレベルを汎用的な表現で整理している。組織によっては、A社が担当する業務領域とB社が担当する業務領域は違ってくるので、広く皆が参照できるようにまとめている。
 「一人ひとりが担当する業務はスタートアップと大手では違ってきます。例えばスタートアップであれば、すべての業務を横断的に担当する方も多くいらっしゃると思いますし、
一方、大手であれば、特定の業務・特定の領域を、専門性をもって対応する方も多いと思います。この流動感も合わせていく。役職の付け方に関してもスタートアップと大企業では異なると思います」
 これらをふまえ、汎用的な表現で整理をし、各活用者がカスタマイズすることを前提としている。

宇宙スキル標準の整理範囲

▲Ⓑ宇宙スキル標準の整理範囲(出典:内閣府宇宙開発戦略推進事務局)

 

では、具体的にどういった範囲を整理しているのか、簡易的に全体像をまとめたものが《1面表Ⓑ参照》となる。左から右を業務の流れに、宇宙輸送機を開発・製造、試験し、打ち上げて活用していくプロセスを大まかに列記している。特にブルー表示の部分が、今年2月に公開した試作版にて整理した範囲で、主には設計解析や製造のあたりが整理された状況である。
 一方では、ピンク表示の部分に関しては、昨年度の試作版で項目を荒い粒度で挙げるに留まっており、今年度中(2026年3月)に深堀りしていく状況にあり、今年2月に公開した範囲の内容紹介になっている。
 ブルー表示の業務カテゴリーはまず【プログラム創造・組成】は、新たなビジネスの創造や、宇宙輸送機・人工衛星によって成し遂げられるミッションの策定など、宇宙業界における新たな価値創造を担う業務領域。
 【プロジェクトマネジメント】は、宇宙輸送機や人工衛星の開発に関わるプロジェクトの立ち上げ、計画、実行等プロジェクト進行・運営に関わる業務領域。
 【システム全体エンジニアリング】は、システム(宇宙輸送機や人工衛星)全体に係るエンジニアリング業務領域。
 そして【領域別エンジニアリング】は、構造系・推進系・電気系・通信系・熱制御系・制御系(姿勢・誘導)・ データ処理系・ソフトウェア系における設計・解析・製造・試験などの業務領域とまとめている。
 川下の部分(ピンク表示)である【打上げ】【運用・活用】【コーポレート業務】はまだまだ精緻化できておらず、項目だけを試作版の中では挙げるに留まっている。
 これらスキルの全体像を「スキルカテゴリ・項目一覧」として、宇宙スキル標準試作版の中では「製造・加工」「製造基本技能」など計94のスキルを整理している。次回に詳報したい。
(続く)

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